EADE is DEAD

冥銭持たずに門前払い

美浦坂路直線化計画「美浦メトロポリタンX」

西高東低の要因の一つとして何かと槍玉に挙がる美浦坂路。然るに美浦トレセンとしても改善したいのは山々ながら、土地という物理的な制約から勾配が緩かったり、湾曲していたりと満足のいく改善が行えないのが現状である。しかし、真っ直ぐで高低差のある坂路への夢を捨てたわけではない。現在栗東トレセンは厩舎改築11ヶ年計画の真っ只中で出費が激しい事もあり、反攻するなら今がチャンスと見る向きもある。ある関係者は「まだ一部の人間しか知らないが」と前置きしつつ、驚くべき計画「美浦メトロポリタンX」を坂路党にリークしてくれた。

ある関係者は語る。「物理的な制約があるというのは我々も認識しています。地上に造る限りは、ですけどね。我々は地下鉄にヒントを得ました。地下鉄と言えどその名の通り地下で走るモノとは限りません。時には地上へ姿を現す路線も存在するのはご存じの通りです。その地下から地上へ出るという概念を坂路へ取り入れれば、制約を打破できると考えています。」 これまでの坂路は自然の丘陵を利用したり、土を盛ったりとあくまで地上から上のレイヤーだった。しかし、彼らはそれが難しいのなら穴を掘って更に下のレイヤー、つまりは地下からスタートすればいいじゃないかという発想である。正直その発想はなかった。

ある関係者はこう続ける。「もちろん様々な障壁があります。まず土地の権利関係ですが、地主さんは土地そのものをお譲りになる気はない様です。譲って頂けるのなら地上でも良いわけですから。しかし、ある程度の深さ以上の地下なら補償費を支払う事で使用可能な手応えを先日銀座で行った非公式会合で得ました。また、地下という事で某かの管や水脈も気になりますが、ダンジグ、もといダウジングしてみたところ特に問題はないようです。もちろんL字ロッドです。」 そういえば世の中にはダウジング予想なるものが存在する。ダウジングの結果こう出ましたと言われてはそうですかと言う他ない。

ある関係者はまだ続ける。「地下への進入は現在の逍遥馬道をそのまま地下へ延長する形がベターでしょう。中には空母の様な大型昇降機を導入しようという声もありますが、馬の回転や維持管理を考えると現実的ではないという意見が大勢を占めています。個人的にはロボットアニメみたいに馬房から滑り台でサーッとスタート地点に行き、そこから地上に飛び出してゴー!アクエリオン!な感じがいいのですが誰も話を聞いてくれません。」

ある関係者は間髪を入れず、「BGMはもちろん菅野よう子さんで決まりです。地下部分は四方を囲まれていますので良く聞こえるでしょう。馬も騎乗者もノリノリですよきっと!サラブレッドは三百年、アクエリオンは一万年と二千年前からと歴史の深さも通じるものがあります。西高東低の勢力図逆転の肝は実はこれだと睨んでいるのですが、あなたもそう思いませんか?」と言い、私は「そうですか」と答え話を終えた。

「まだ一部の人間しか知らないが」という前置きが「まだ私の妄想段階だが」の様な気がしないでもない今回の情報。実は二年前の美浦坂路逆走プランも彼からリークされたものだった。あれから二年、試験馬を用いて行われていたとされるデータ採取の成果など一切伝え聞かない。試験馬エイプリルフール号もまた彼の妄想であったのだろうか―